NotebookLMは情報漏えいのリスクがある!事例と5つの対策方法まで徹底解説

NotebookLMは情報漏えいのリスクがある!事例と5つの対策方法まで徹底解説

Googleが開発したAI学習・整理ツール「NotebookLM」は、ユーザーがアップロードしたPDFやGoogleドキュメント、ウェブサイトなどの情報に基づいて、要約や質問応答、アイデア生成を行う画期的なサービスです。その高度な機能は、会議の議事録作成、複雑なリサーチ、膨大な資料の分析といった多岐にわたる業務を劇的に効率化します。しかし、その利便性の裏側には、機密情報や個人情報の漏洩といった重大なセキュリティリスクが潜んでいます。

このリスクは、単にツールの技術的な脆弱性だけでなく、ユーザー自身の利用方法や、プラットフォームの特性を深く理解していないことに起因する場合が少なくありません。本稿では、NotebookLMに内在するリスクを多角的に分析し、生成AIから実際に発生した事例から学ぶべき教訓を考察します。さらに、個人ユーザーと企業・組織がそれぞれ講じるべき、具体的かつ網羅的な対策方法を解説します。

目次

NotebookLMにおける情報漏洩リスクの全体像

Googleが提供するセキュリティとユーザーの責任範囲

NotebookLMのセキュリティは、サービス提供者であるGoogleが講じる対策と、ユーザー自身が担うべき責任という二つの側面から成り立っています。Googleは、アップロードされたデータを保護するため、高度な暗号化技術を導入しています。データは転送中および保存中の両方で暗号化され、外部からの不正アクセスを防ぐための強固な対策が講じられています。さらに、NotebookLMにアップロードされた情報は、特にユーザーが共有を選択しない限り、ユーザーのGoogleアカウントに紐づけられており、他のユーザーがアクセスすることはできない設計になっています。

しかし、これらの強固な基盤があっても、情報漏洩のリスクはゼロにはなりません。これは、サービスの安全性確保がユーザー自身の行動にも大きく依存するためです。NotebookLMの利用規約や制限事項では、ユーザー側が自発的に個人情報や機密情報をアップロードしないよう明確に求めています。したがって、不適切なアクセス権限設定やアカウント管理の不備、意図しない操作ミスは、すべてユーザー側の責任範囲で発生するリスクとなります。提供側の技術的な安全策がどれほど優れていても、ユーザー側のヒューマンエラーによる情報流出を完全に防ぐことはできません。このことから、NotebookLMのセキュリティは、プラットフォームの技術的な対策と、ユーザーの行動的な対策が組み合わさって初めて実現される二重構造であるといえます。

NotebookLMで情報漏洩が起こりうる5つのケース

機密情報を誤ってアップロードした場合

最も直接的な情報漏洩リスクは、ユーザーが意図せず、あるいはセキュリティ意識が低いままに機密情報をアップロードしてしまうケースです。これには、顧客リスト、社内計画書、未公開のソースコードなどが含まれます。NotebookLMはアップロードされたデータに基づいて応答を生成するため、ユーザーは無意識のうちに機密情報をAIシステムに渡し、その情報がサービス内に保存されることになります。この行為自体が情報漏洩に直結するだけでなく、アップロードされたデータはシステム内に残り続けるため、長期的な情報漏洩リスクを生み出します。

不適切な共有設定やアクセス権限管理の不備

NotebookLMには、作成したノートブックを他のユーザーと共有する機能が備わっています。しかし、この共有設定を誤ると、情報が意図せず拡散する重大なリスクが発生します。たとえば、機密情報を含むノートブックを「リンクを知っている全員」に公開設定してしまうと、予期せぬ形で情報が拡散する可能性があります。また、プロジェクトが終了したり、メンバーが異動・退職したりした後も共有設定を解除し忘れた場合、不要になった人物が機密情報にアクセスできる状態が続いてしまいます。

さらに、権限の過剰付与もリスクです。閲覧のみで十分なユーザーに誤って編集権限を与えてしまうと、元の情報が改ざんされる危険性も生じます。これらの問題は、企業で従業員が個人アカウントを業務に利用している場合に特に深刻化します。なぜなら、企業として統一されたガバナンスが効かず、管理者が誰がどのような情報にアクセスしているかを把握できないためです。

アカウント情報の漏洩(多要素認証の未設定など)

NotebookLMはGoogleアカウントを通じて利用するため、Googleアカウントが第三者に乗っ取られてしまうと、NotebookLM内の情報もすべて流出する危険性があります。アカウント情報が漏洩する主な経路には、複数のサービスで同じパスワードを使い回すこと、偽のウェブサイトで情報を盗むフィッシング詐欺、そしてキーボード入力情報などを盗み出すマルウェア感染が挙げられます。

このリスクを飛躍的に高めるのが、多要素認証(MFA)が未設定の状態です。多要素認証は、パスワードに加えてスマートフォンへの確認コード入力など、もう一つの認証要素を要求することでセキュリティを強化するものです。もしフィッシング詐欺などでパスワードが漏洩しても、多要素認証が設定されていれば不正ログインを未然に防ぐことができます。

人間のレビュアーにより情報がチェックされた場合

NotebookLMにアップロードされたデータが、人間のレビュアーによってチェックされる可能性があるという議論がRedditコミュニティで提起されました。あるユーザーによると、NotebookLMのプライバシーポリシーが更新され、AIが生成したかどうかにかかわらず、ユーザーのノートやドキュメントが人間によってレビューされる可能性があると示唆されているといいます。

この議論は、利用するアカウントの種類によってデータ利用ポリシーが根本的に異なるという事実を浮き彫りにします。Googleの公式情報によると、Google Workspaceユーザー向けには、アップロードされたデータ、クエリ、モデルの応答が人間のレビュアーの対象にはならず、AIモデルのトレーニングにも使用されないと明記されています。一方、個人アカウントでフィードバックを送信した場合、トラブルシューティングや悪用防止、改善目的でクエリやアップロード内容が人間によってレビューされる可能性があるとされています。この違いは、個人向けサービスが利便性向上や新機能開発のためにユーザーデータを活用する余地を残す一方、企業向けサービスではコンプライアンスとプライバシー保護を最優先にしているという、Googleのデータ利用ポリシーにおける根本的な思想の違いを反映しています。

プロンプトインジェクションによる意図しない情報開示

プロンプトインジェクションとは、AIに対する悪意のある指示(プロンプト)によって、本来想定されていない挙動を引き起こし、機密情報や内部情報を引き出すサイバー攻撃の一種です。この攻撃には、直接的なものと間接的なものがあります。

NotebookLMでは、攻撃者が作成したドキュメントやウェブページに巧妙に埋め込まれた不正な指示(間接的プロンプトインジェクション)により、意図しない情報漏洩が発生する可能性があります。たとえば、AIにウェブページの内容を要約させる際、そのページに隠された不正なプロンプトが埋め込まれていると、AIがそのプロンプトを指示と誤認し、ユーザーのチャット履歴や他のドキュメントから機密情報を抜き出して外部に送信する可能性があります。このような攻撃は、ユーザーが意識しないうちに発生する可能性があり、その巧妙さから対策が難しいとされています。

生成AIから実際に起きた情報漏洩の事例(NotebookLM利用者が学ぶべき教訓)

サムスンの社内ソースコード流出

韓国のサムスン電子では、従業員がChatGPTに社内ソースコードをアップロードしたことが発覚し、全社的に生成AIツールの使用を原則禁止する措置が取られました。この事例は、NotebookLMの利用者が最も意識すべき「ユーザーの安易な利用が引き起こす直接的な情報漏洩リスク」を象徴しています。NotebookLMがアップロードデータをモデル学習に利用しないと謳っていても、機密情報をアップロードする行為そのものが企業のセキュリティポリシー違反であり、プラットフォーム内のデータが不正アクセスや不適切な共有によって流出する潜在的なリスクをはらんでいることを示しています。

ChatGPTで他者のチャット履歴が誤表示

2023年3月、ChatGPTでシステム障害が発生し、一時的に他ユーザーのチャット履歴が誤って表示される事態が起きました。この事例は、「プラットフォーム側の技術的なバグによる情報漏洩リスク」を示唆しています。たとえ提供側が強固なセキュリティ対策を講じていても、システムの不具合によって情報が意図せず流出する可能性はゼロではありません。この事例から、ユーザーは提供元を信頼しつつも、万が一のリスクに備え、最初から機密情報をアップロードしないという自己防衛策の重要性を再認識すべきです。

日本のChatGPTアカウントが闇取引市場で売買

日本のユーザーを含む661件のChatGPTアカウント情報が、マルウェアによって盗み出され、ダークウェブの闇取引市場で売買されていた事例が報告されました。この事例は、「ユーザー側のデバイスとアカウント管理の不備」が情報漏洩に繋がる典型的なケースです。NotebookLMはGoogleアカウントに紐づくため、フィッシング詐欺やマルウェアによってGoogleアカウント情報が盗まれれば、NotebookLM内の情報もすべて流出します。このリスクは、AIサービス自体のセキュリティとは関係なく、ユーザー自身のセキュリティ意識と対策(多要素認証など)に依存していることを強く示しています。

NotebookLMで情報漏洩を徹底的に防ぐための対策法

ユーザーが個人で実施すべき4つのセキュリティ対策

  1. 強力なパスワードと多要素認証の設定: 推測されにくい複雑なパスワードを設定し、他のサービスとの使い回しを避けることが基本です。さらに、Googleアカウントの多要素認証(MFA)を必ず有効にすることで、パスワードが漏洩しても不正ログインを未然に防ぐことができます。Googleアカウントのセキュリティ診断機能を定期的に活用することも有効な手段です。
  2. 機密情報・個人情報のアップロードを避ける: これが最も基本的かつ最も重要な対策です。NotebookLMにアップロードする情報の機密性を厳格に判断し、社内規定やコンプライアンス要件に違反する可能性のあるデータは絶対にアップロードしないよう徹底します。
  3. 共有設定の厳格な管理と定期的な見直し: ノートブックを共有する際は、必要最小限のメンバーにのみアクセス権限を付与する「最小権限の原則」を徹底します。また、プロジェクト終了やメンバーの異動・退職時には、不要になった共有設定を速やかに解除し、定期的に設定を見直す習慣をつけることが重要です。
  4. 不用意なフィードバックの送信を控える: 個人アカウントを利用している場合、フィードバック送信時にアップロードデータが人間によってレビューされる可能性があることを理解しておく必要があります。極秘情報や個人情報を含むノートブックについては、フィードバック機能を安易に使用しないよう注意が求められます。

企業・組織が導入すべき3つのセキュリティガバナンス

  1. NotebookLM Enterprise(旧Plus)以上のプラン利用の検討: 組織としてのセキュリティガバナンスを確立できない個人アカウントでの業務利用は非常に危険です。企業は、NotebookLM Enterpriseのような企業向けプランの導入を真剣に検討すべきです。これらのプランは、データが組織内のGoogle Cloudプロジェクト内に留まり外部に共有されないことや、人間によるレビューがないなど、個人向けプランにはない高度なセキュリティ・コンプライアンス機能を提供しています。
  2. 社内利用ガイドラインの策定と従業員教育: 従業員が無許可で無料の生成AIツールを業務に利用するリスクを減らすため、企業として利用を許可するツールを明確にし、その利用に関するガイドラインを策定する必要があります。ガイドラインには、アップロードしてよい情報とそうでない情報の定義、共有設定のルール、アカウント管理の注意点などを盛り込み、従業員へのセキュリティ教育を定期的に実施することが不可欠です。
  3. アクセスログの監視体制の構築: 不正なプロンプトの入力やアカウントの不正利用を早期に検知するため、アクセスログの監視体制を構築することが有効です。

対策の要点:個人向けと企業向けプランのセキュリティ機能比較

NotebookLMのセキュリティを考える上で最も重要なのは、利用プランによってセキュリティ機能やデータ保護の範囲が根本的に異なることを理解することです。個人ユーザー向けのセキュリティ対策と、企業が求めるセキュリティ対策は、その目的と保証範囲が全く異なります。企業が個人向けプランを業務利用した場合、管理者は誰がどのような情報を扱っているか把握できず、退職後のアクセス権限を剥奪することも困難となります。この「管理の欠如」という根本的な問題を解決できるのは、VPC-SC準拠やIAMコントロールといった企業向けプラン固有の機能だけです。以下の比較表は、この核心的な違いを明確に示しています。

項目NotebookLM (個人向け)NotebookLM Enterprise (企業向け)出典
データの取り扱いユーザーデータはAIモデルの学習に使用されない。ユーザーデータはAIモデルの学習に使用されない。1
人間によるレビューフィードバック送信時に、トラブルシューティングや改善目的で人間がレビューする可能性あり。人間によるレビューの対象外。3
データ保管場所Googleのサーバー。特定のデータレジデンシーは指定不可。ユーザーのGoogle Cloudプロジェクト内に留まる。USおよびEUのマルチリージョンで利用可能。6
コンプライアンス機能VPC-SC非準拠。VPC-SC準拠、IAMコントロール、エンタープライズグレードのデータ保護を提供。7
共有設定ユーザー間でメールやリンクを介して共有可能。公開共有も設定可能。同一Google Cloudプロジェクト内のユーザーとのみ共有可能。公開共有は不可。6
認証方法個人用Googleアカウント。Cloud Identity、またはMicrosoft Entra IDなどのサードパーティIdP経由。6
管理機能なし。管理者コンソールからユーザーやアクセス権限の一元管理が可能。8

まとめ

NotebookLMは、強力なAI機能を活用して業務効率を飛躍的に向上させるツールです。しかし、その利便性は、ユーザー自身が情報漏洩リスクを正しく理解し、適切な対策を講じることによってはじめて享受できるものです。サムスンやChatGPTの事例が示すように、安易な機密情報アップロードやアカウント管理の不備は、サービス自体のセキュリティとは無関係に情報漏洩を招く可能性があります。

企業での利用においては、個人アカウントの利用が持つ潜在的なリスクを回避し、NotebookLM Enterpriseのような専門的なプランと、組織的なセキュリティガバナンスを確立することが不可欠です。本稿で提示したユーザーによる個別対策と、企業が導入すべきガバナンスの両輪を回すことで、NotebookLMを安全かつ最大限に活用できるでしょう。

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この記事を書いた人

林 雅志のアバター 林 雅志 株式会社Pepita CEO

株式会社Pepitaという会社にて、AIを活用したメディア運営支援・AI教育事業を展開しております。

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